● お口の健康を守るプロバイオティクス
 「プロバイオティクス」とは、ちょっと聞きなれない言葉かもしれません。簡単に言うと、「細菌のバランス」を改善して、人体に良い影響を与える微生物のことを指します。乳酸菌が特に有名ですが、それらを含む食品のヨーグルトやぬか漬けなどを、整腸作用などを期待して毎日食べておられる方も多いと思います。実はこの「プロバイオティクス」、整腸作用だけでなく、虫歯や歯周病の予防に役立つことがわかってきました。国をあげて予防歯科に取り組んでいるスウェーデンでは、「プロバイオティクス」を用いた予防が盛んに行われています。今回は、当医院でおすすめしている乳酸菌、「L.ロイテリ菌」について述べてみたいと思います。

● 歯を守る乳酸菌、L.ロイテリ菌
 「ラクトバチルス ロイテリ菌」(L.ロイテリ菌)はヒトの消化管や母乳から発見された乳酸菌です。この乳酸菌には、虫歯菌や歯周病菌の増殖を抑制する作用が認められています。広島大学で行われた研究によると、「試験管の中で虫歯菌とL.ロイテリ菌を一緒に培養すると、虫歯菌の増殖は約90%抑制される」とのことです。さらに、同大学で実際のヒトの唾液中の虫歯菌の数の変化を見てみると、「L.ロイテリ菌を摂取すると、唾液中の虫歯菌の数は1/3〜1/5にまで減少する」という結果が得られています。また、歯周病についても、L.ロイテリ菌の摂取によって歯周病菌は90%減少し、歯周病の改善傾向が見られることも示されています。当医院でも、歯周病の方にL.ロイテリ菌の摂取をおすすめすると、2週間ぐらいで歯肉出血などの歯周病の症状の改善傾向が見られるのを経験しています。

● L.ロイテリ菌はお口だけでなく全身の健康にも作用する
 L.ロイテリ菌を摂取すると、虫歯や歯周病のリスクが軽減するだけではありません。口臭を減らす効果もあります。また、胃腸に作用して、便通を整えたり、胃のピロリ菌を減らしたりする効果もあります。さらに、免疫細胞を活性化して、アトピー性皮膚炎や花粉症などを軽減することも知られています。実際、近隣の歯科医院で、アトピーのあるお子さんに虫歯予防のためにL.ロイテリ菌の摂取を勧めたところアトピーがなくなったということです。私個人もL.ロイテリ菌を撮り始めて花粉症から解放されています。

● L.ロイテリ菌の作用機序
 L.ロイテリ菌は「ロイテリン」という抗菌物質を産生します。このロイテリンは、有益な善玉菌には作用せず、虫歯菌や歯周病菌などの悪玉菌だけに作用してその増殖を抑える作用があるとされています。悪玉菌が減り善玉菌が増えることで「細菌のバランス」が改善し、虫歯や歯周病の感染のリスクが軽減するものと考えられます。
 ただL.ロイテリ菌を摂れば、悪玉菌が全くいなくなってしまうわけではありません。成人では、L.ロイテリ菌は定着せず、1週間以内に体外に排出されてしまいます。その効果を期待するのであれば摂り続ける必要があります。サプリメントと同様に継続することが大切です。

● L.ロイテリ菌の安全性について
 世界80の国や地域において、L.ロイテリ菌を用いたプロバイオティクスが採用されています。西欧諸国や米国などの多く医療機関で使用されていることから、一定の信頼性は確保されているのではないかと考えられます。また、スウェーデンでは、その安全性と信頼性から、妊婦や新生児にも積極的に使われているようです。
 L.ロイテリ菌の特許を持っている「BioGaia社」は、多くの臨床試験を公表しています。健康な人だけでなく、消化器疾患で入院中の方、HIV感染者、集中治療室の未熟児などにも悪影響は出なかったとしています。

● L.ロイテリ菌のプロバイオティクスはどこで入手できるのか
 L.ロイテリ菌の多くは、スウェーデンの「BioGaia社」が保有しており、特許を持っています。同社のサプリメント「プロデンティス」が広く知られており、実績もあります。この「プロデンティス」は取り扱いのあるお近くの歯科医院で購入できます。取り扱いがあるかないかは歯科医院にお尋ねいただけばよいでしょう。BioGaia社から直接購入することも可能です。同社のホームページにアクセスしてみてください。ただしこの場合は送料がかかるようです。Amazonでも取り扱いがあるようです。