最近は何か特別な事情がある場合を除き、治療の途中で来院されなくなるようなことは少なくなりました。しかしながら、稀ではありますが、いまだ治療中断によると考えられるトラブルで来院される方がおられるのも事実です。
当初あった痛みが治まったとしても、治療が終了したとは限りません。そのような安易な自己判断をせず、治療が終了するまで根気よく通院していただく必要があります。さもなければ、後でいろいろなトラブルが生じ、後悔することになりかねません。今回は、治療を中断した場合に起こりうるトラブルについて説明し、治療中断に対する警鐘としたいと思います。

●虫歯治療の中断で起こるトラブル:虫歯の治療では、虫歯の部分を取り除き被せが入るような形に歯を削り被せの歯型をとります。その際、被せができるまでの間削った歯を保護するために仮詰めや仮歯を装着します。状態によっては虫歯を取り除いた後、薬などをつめ、仮詰めや仮歯を装着して一定期間様子をみることもあります。仮詰めや仮歯はあくまで一時的に使用するものす。その強度は長期の使用に耐えうるものではありませんし、不潔になりやすい材質です。この仮詰めや仮歯を最終的な詰め物や被せと誤解されているのかもしれませんが、そのまま仮詰めや仮歯を使用していると新たな虫歯や歯肉炎などが発生する可能性があります。虫歯の進行によっては歯の神経を取ったり、抜歯にいたったりすることもあるかもしれません。また、せっかく歯型までとって作った被せや詰め物が合わなくなることもあります。その場合、歯の削り直しや歯型の取り直しが必要となります。

●歯の根っこの治療(根管治療)の中断で起こるトラブル:歯の根っこの治療(根管治療)は、歯科医師が針のような器具で歯をつついているだけのような地味な治療です。そのわりには長時間に及んだり何回も通院が必要となったりすることもあり、治療の重要性が理解されにくいかもしれません。しかしながら、歯の根っこの治療は、治療の成否が歯の運命に関わる大変重要な治療です。そのためこの治療中断すると、歯にとって重篤なトラブルが生ずる可能性があります。すなわち中断によって、歯の根管の中で細菌が増殖しはじめます。細菌が歯の中だけに留まらず周囲の歯を支えている骨まで侵すようになると強い痛みや腫れがでるようになります。たとえ症状はなくても顎の骨の中に膿が溜まっているようになることもあります。中断していた時間が長くなりますと、当然ながら再治療が難しくなり、治療にはさらに多くの時間や回数を要するようになります。状態によっては完治が望めず抜歯にいたる場合もあるかもしれません。さらに治療中の歯はもろく、欠けたり割れたりしやすくなっています。治療中の歯で不用意に強く噛んだりしないよう注意が必要です。