当院では歯科治療が終了したら、おおむね3〜6ヶ月ごとの定期検診をおすすめしています。「治療が終わったのに面倒くさい」と思われる方がおられるかもしれませんが、お口の健康維持のためにはメインテナンスは欠かせません。治療に時間がかかった人ほど、定期検診に通っていただきたいと思っています。では「どのくらいの間隔で定期検診に通えば良いのでしょうか。今回は歯科の定期検診の適切な通院間隔についてその根拠を含めて解説してみたいと思います。

●「検診」と「健診」の違いについて:「けんしん」というと、1年に1回程度会社や自治体などで受けられる「健診」を思い浮かべる方が多いかと思います。この“健診”は「健康診断」の略で、主に現在の健康状態を評価する目的で行われます。これに対して“検診”は、特定の病気を調べる検査を意味しており、病気を早期発見し早期治療に結びつけることを目的としています。これに該当するのが、「歯科検診」であり、その他には「がん検診」などがあります。

●3〜6ヶ月おきの定期検診がおすすめ:従来の歯科健診は、虫歯や歯周病などの病気の早期発見・早期治療を目的に行われてきました。しかしながら、虫歯や歯周病の発症メカニズムが解明されるにつれ、それらの病気の再発を抑制するためには、お口の衛生状態を良好に保つことが重要であることが解ってきました。そこで歯科検診では、従来の“検診”に加えて、“メインテナンス”の要素が加わるようになりました。これが、歯石除去(スケーリング)や歯科衛生士が主体となって行うプロフェッショナルクリーニングです。日々の歯磨きだけでは取り除けない歯垢や歯石を取り除く処置のことで、虫歯や歯周病の原因菌を取り除きます。お口の健康を維持するためには、このプロフェッショナルクリーニングを3〜6ヶ月ごとに受ける必要があります。1年に1回程度では不十分で、効果はあまり期待できません。その科学的根拠(エビデンス)を以下に示します。

●3〜6ヶ月の定期検診が適切と考えられる科学的根拠:虫歯や歯周病は歯垢(プラーク)中に含まれるいわゆる虫歯菌や歯周病菌が原因です。この歯垢(プラーク)は、早期であれば歯ブラシなどで歯から取り除くことができます。しかしながら、どんなに丁寧に歯磨きをしたとしてもセルフケアだけでは歯ブラシの届かない部分いわゆる磨き残しが生じます。このわずかに取り残された歯垢(プラーク)は3日も経つとバイオフィルムを形成して強固になり、歯ブラシでは取り除きにくくなってしまいます。さらに3ヶ月もするとこのバイオフィルムの中で細菌どうしが連携して悪性度を増し、その結果病原性を獲得するようになります。ですので、この3ヶ月、すなわち細菌がバイオフィルムの中で悪性度を増してくる頃を目安に取り除けば、虫歯や歯周病のリスクを低下させることになります。バイオフィルムは強固なため、セルフケアで取り除くのは困難です。そのため歯科医院での専門的クリーニング(プロフェッショナルケア)を受ける必要があります。専門的クリーニングとは歯科衛生士が主体となって行う歯石除去(スケーリング)やPMTCなどの処置のことです。