「キシリトールガムって、歯にいいんですか?」と時々たずねられることがあります。そこで今回は、キシリトールガムの虫歯予防効果や効果的な噛むタイミングなどについて述べたいと思います。

●キシリトールとは
 キシリトールは、多くの果実や野菜の中に含まれている天然の甘味料です。私たちがガムやタブレットで口にするキシリトールは、主に白樺などの樹木から採取される成分を原料として生産されています。カロリーは砂糖の約75%です。

●キシリトールの虫歯予防効果
 フィンランドでは、歯磨きやフッ素の他にキシリトールを食後に摂ることで、国民の虫歯を激減させることができました。このことから、キシリトールは虫歯予防に効果があると考えられています。その理由はふたつあります。
 ひとつは、「キシリトールは虫歯の原因にならない」ことです。キシリトールを摂取しても、お口の中の細菌は虫歯の原因となる「酸」を産生することができません。さらに、プラーク中の酸を中和し、虫歯の進行を抑える作用も持っています。さらに、キシリトールの甘さによって唾液が沢山産生され、虫歯ができにくくなる効果もあります。
 もうひとつは「虫歯の発生、進行を防ぐ」ことです。キシリトールは、虫歯の大きな原因とされるミュータンス菌の活動を弱める働きがあります。また、キシリトールによって、虫歯の原因となる歯垢(プラーク)が歯につきにくく、剥がれ落ちやすくなることも知られています。さらに歯の再石灰化を促して歯を強くする効果もあります。

●虫歯予防のためのキシリトールの摂取方法について
 キシリトールガムを噛むタイミングですが、これはとりあえず食後がよろしいかと思います。1日3回10分以上噛んでください。歯磨きの前か後かについては、キシリトールのどの効果を期待するかによって異なります。歯磨きの効果を高めるためには、歯磨きの前が良いでしょう。一方、歯を強くすることを期待するのであれば、歯磨きのあとがおすすめです。これはどちらでも構いません。ただ後述するガムの場合は、歯を強くする成分も含まれているため歯磨き後の方が良いかもしれません。いづれにしても、キシリトールの虫歯予防効果を十分に発揮させるのであれば、1日3回、3ヶ月以上、毎日続けることが大切です。毎食後に追加して、就寝前に摂取するのも有効です。
 ただし注意していただきたいのは、キシリトールガムを歯磨き代わりに使うということはできないということです。キシリトールガムを噛めば歯磨きをしなくて良いということは決してありません。キシリトールはあくまで補助的に使うものです。正しい歯磨きができた上でキシリトールを摂取することで予防効果が期待できるのです。

●虫歯予防に効果のあるキシリトール製品
 キシリトール製品を選ぶ時には、その成分分析表や栄養成分表を確認して、糖質0gとなっているものを選んでください。市販の「キシリトール」と表示されている製品の中には、キシリトールが含まれているものの、その比率が低く、キシリトールの効果があまり期待できないものもありますのでご注意ください。
 下記の3種類のキシリトールガムは、再石灰化を促進する成分を含有しており、特定保険用食品として認定されています。

○ ロッテ キシリトールガム
○ 江崎グリコ ポスカム
○ キャドバリー・ジャパン リカルデント

 上記3つのガムは、キシリトールだけのものより、歯の再石灰化を促し、歯を強くすることが証明されています。なかでも、ロッテのキシリトールガムが最も高い再石灰化効果が認められたというデータがありますが、これはヒトで行った実験ではないので、今後検証する必要があるかもしれません。
 何度も述べますが、キシリトールガムを噛むだけでは、虫歯予防は期待できません。虫歯から歯を守るためには、正しく歯を磨いたり、お砂糖の入った飲食物の摂り方に注意し、定期検診を受けることが大切です。その上でキシリトールやフッ素などをうまく使って、より効果的に虫歯予防を行いましょう。