小学校へ歯科検診に行くと、「歯ならびが気になる」という児童が少なくありません。これは本人よりも保護者の方が心配されていることが多いように感じています。学童期は、乳歯から永久歯への生えかわりの時期にあたるため、一見歯ならびが悪いように見えるので、心配されていることが多いのだと思います。そこで今回は、子どもの歯ならびについて、述べてみたいと思います。
 もし現時点で、お子様の歯ならびが気になっておられるのであれば、次回の学校検診まで待たずになるべく早くお近くの歯科医院に相談に行かれるのをおすすめします。症例によっては、生えるべき歯が顎の骨の中に埋まっているために、歯並びが悪くなっていることがあります。これはレントゲンで検査をする必要があります。また、たとえ1本の歯のかみ合わせの異常によっても顎の成長にまで影響が及ぶ場合もあります。放置すると将来顎や顔が変形してしまう恐れがありますので注意が必要です。
 お子様は日々成長しています。良い結果を得るためには、早期発見、早期治療が大切であることは言うまでもありません。これは歯ならびやかみ合わせについても同じです。

 私たちが学校の歯科検診で行なっている歯ならび・かみ合わせの検査について説明します。判定は、異常なし、要観察、要精査の3段階となっています。
以下に、それぞれの歯ならび・かみ合わせの種類と、要精査との判定基準について述べます。
●反対咬合(下顎前突)
 下の前歯が上の前歯より前に出た状態のことを言います。いわゆる「うけ口」の状態です。3歯以上の下顎の歯が前に出ていると要精査となります。
●上顎前突
 下顎に対して上顎や歯が前に出ている状態のことを言います。いわゆる「出っ歯」の状態です。下の前歯より上の前歯が8ミリ以上前に出ていると要精査です。
●叢生
 歯ならびがデコボコした状態のことを言います。顎の骨の大きさに比べて歯が大きすぎることによって、歯が並びきれなくて起こることが多いとされています。「乱杭歯や八重歯」の状態のことを言います。前から見て、歯の幅の4分の1以上が見えなくなっていると要精査の判定です。
●正中離開
 左右の前歯が離れており隙間がある状態のことを言います。隙間が6ミリ以上あると要精査の判定となります。
●開咬
 噛むと奥歯だけが当たって、前歯を噛み合わせることができない状態のことを言います。奥歯を噛んで、前歯に6ミリ以上の隙間ができると要精査の判定となります。ただし、歯が生えかわっている途中の場合は判定できません。
●その他
 これら以外に、交差咬合、過蓋咬合などがあります。歯ならびやかみ合わせの異常がたとえ1歯だけでも顎の成長に影響を及ぼしている場合には要精査と判定することもあります

 歯ならびやかみ合わせが悪いと、歯磨きがしにくく、虫歯や歯周病になりやすくなります。加えて、咀嚼や発音が難しいこともあります。さらに、顎の成長や顔貌などへも影響が及ぶこともあります。お気付きのように学校の歯科検診の要精査判定はかなり重度のものになりますので、お子様の健全な発育を考えると、かみ合わせや歯並びに異常があるようでしたら、なるべく早くお近くの歯科医院で診てもらわれることをおすすめします。歯ならびやかみ合わせに異常がなさそうでも、歯が生えかわり始めたら、一度歯科医院でチェックを受けられるのもよろしいかと思います。当医院では、定期検診時に虫歯だけでなく歯ならびやかみ合わせのチェックも行なっています。