前回は主に口腔乾燥症の病状について述べましたが、今回はその予防方法や日頃の生活で気をつけていただきたいことなどについて述べたいと思います。

●口腔乾燥症のお口や体の健康への影響
唾液の分泌量が減少してくると、唾液によるお口のクリーニング機能が低下してきます。そのことによってお口の中の汚れが残りやすく、細菌が繁殖しやすくなります。増殖した細菌によって虫歯や歯周病にかかりやすくなりますし、口臭も生じやすくなります。
さらに、唾液による免疫などの生体防御機能が低下してくるために、細菌やウイルスが体内に侵入しやすくなります。風邪やインフルエンザあるいは新型コロナなどに感染しやすくなるのです。加えて、特に高齢者であれば、誤嚥性肺炎に気をつけていただく必要があります。これはお口の中で繁殖した細菌が肺に感染するもので、命にかかわる危険もあります。

●口腔乾燥症の予防は規則正しい生活習慣から
前回述べたように、口腔乾燥症の原因は、全身的な病気やお薬の影響、老化や生理現象によることが多いのですが、生活習慣が関係していることもあります。たとえば、過度な飲酒や喫煙あるいはダイエットなども唾液の量を減らす原因になります。さらには、不規則な生活やストレスも原因となる可能性があります。比較的若い方で、病気やお薬服用の既往がない方はこのような生活習慣や心因的原因が関係しているかもしれません。日頃から規則正しい生活をして、食事はゆっくりとよく噛んで唾液の流出を促すような食習慣を意識することが口腔乾燥症の予防には大切です。

●口腔乾燥症の治療について
口腔乾燥症の原因がわかれば、その原因に対する治療を行います。一般的に、明らかな唾液の減少がみられる場合は、シェーグレン症候群や糖尿病あるいは腎臓病などの全身的要因やお薬の副作用や癌治療の副作用、あるいは老化の可能性などがあります。一方、唾液の減少が明らかでない場合であれば、口呼吸や心因性の可能性が疑われます。いずれにせよ一度関係する医療機関を受診して原因ついて調べていただくのがよろしいかと思います。
 そのうえでいわゆる対症療法を行うことになります。歯科でも傷ついた粘膜に対して軟膏や含漱剤を処方することができます。乾燥した粘膜の保護には保湿剤や人工唾液などが用いられます。口腔乾燥症があるとカンジダ症を発症しやすくなっていますので注意が必要です。もしカンジダ症がみられれば抗真菌剤を処方します。口腔乾燥が著しい場合には、マウスピース様の保湿装置(モイスチャープレート)を作成し、その内面に保湿剤を塗布して用いることもあります。
 唾液腺マッサージも効果があると言われています。これは、ガムやキャンディーを噛みながら唾液腺をマッサージして刺激するものです。加えて口腔周囲の筋肉や舌に一定の運動を負荷する筋機能療法を行うこともあります。これらのやり方はかかりつけの歯科医院で相談してみてください。詳しく説明していただけると思います。
定期的に歯科を受診することによって、口腔乾燥症の早期発見早期治療が可能となります。また、口腔乾燥症による二次的障害を予防するためにも、口腔清掃あるいは虫歯や歯周病の治療や予防、義歯の作成や調整などを行なって、日頃から口腔環境を整えておくことは大切です。