●口腔機能低下症の診断
実際問題として、「お口の老化」をご自身だけで自覚するのは少し難しいかもしれません。これは、老化は急におこるのではなく徐々に進みますから、老化の症状があったとしても気づきにくいことが原因のひとつと考えられます。加えて、お口の老化はどこまでが「正常」でどこからが「老化」なのかその境界が明確でないこともお口の老化がわかりにくい理由かもしれません。ただ、お口の老化をそのまま放置していると、ひいては寝たきりの状態にまで陥ってしまう可能性がありますので注意が必要です。
 歯科では「お口の老化」を「口腔機能低下症」という疾患としてとらえて、医学的な検査によって客観的に診断し、早期の段階で対処しようとする取り組みが行われています。その診断方法は、次に挙げる7つの項目について歯科医師が診査します。3つ以上の項目が当てはまると「口腔機能低下症」と診断されます。診査項目は、①口腔不潔 ②咬合力低下 ③嚥下機能低下 ④口腔乾燥 ⑤低舌圧 ⑥咀嚼機能低下 ⑦舌口唇運動機能低下となっています。口腔機能低下症と診断されると、歯科医師による食生活の改善指導や口腔ケアの指導、口腔機能の改善のためのトレーニングなどが行われます。

●老化予防はお口のケアを毎日欠かさずすることからはじめましょう
お口の衰えは、ご自身のお口の健康について関心がなくなることからはじまると言われています。たとえば、以前は1日3回きちんと歯磨きをしていたのに、歯磨きの回数が減り、歯磨きをしない日も出てくるとかということがあると、お口の老化がはじまりかけているかもしれません。
 お口の老化が進むと、「食べづらい」「飲み込みづらい」「話しづらい「口が乾く」などの症状が現れてきます。加えて、人と会うのを避けるようになったり、外出の機会が減ったりするようになると、より一層ご自分のお口のことに構わなくなるという悪循環に陥ってしまいかねません。すると老化のスピードを早めてしまい、機能低下から機能障害にまで移行してしまうことになります。ですので、お口の老化を予防するためには、まずは毎食後の歯磨きを継続していただきお口の健康にも関心を持ち続けていただくのがよろしいかと思います。

●「かかりつけ医」を持ちましょう
お口の老化や口腔機能低下症を予防する上でもうひとつ大切なのは、「かかりつけ医」を持つことです。歯が悪くなった時だけに受診するのではなく、定期的に検診やクリーニングのために歯科医院に通っていると、歯科医院ではお口の状態を把握していますから、お口の小さな変化にもに気づきやすく、お口の老化や口腔機能低下症のサインを発見しやすくなります。早期に予防処置や治療を行うことでお口の老化を遅らせたり、口腔機能低下症に陥るのを防いだりすることができます。また、老化のことだけでなくその他のお口の悩みについても気軽に相談できるのが「かかりつけ医」を持つことのメリットです。