最近の研究で歯周病は単にお口の中だけの問題ではなく、いろいろな全身の病気と関係があることがわかってきました。今回は、歯周病が、心臓病などの循環器疾患や脳血管疾患にも関係していることについて述べてみたいと思います。

●お口の衛生環境と心臓病
 1日に歯を磨く回数が1回未満の人は、2回以上磨く人に比べて、心臓病になるリスクが1.7倍であったという報告があります。一方、歯周病が重度の人は、そうでない人に比べて心臓発作を起こすリスクが2.8倍であったとの報告があります。また、心臓病ではありませんが、脳血管障害についてみても、歯周病の方はそうでない人に比べて、脳血管障害に陥るリスクが1.66倍であったとの報告があります。これらの報告は、歯周病をはじめとした口腔衛生環境の悪化が、心臓病などの循環器疾患や脳血管疾患になんらかの悪影響を及ぼしている可能性を示唆するものと考えられます 。

●歯周病菌が心臓病を引き起こす
 最近、動脈硬化を引き起こした血管から、歯周病菌の遺伝子が検出されました。このことは、心臓や血管にたどりついた歯周病菌あるいは歯周病菌の成分が動脈硬化の原因となっている可能性を示しています。歯周病の炎症によって破壊された歯茎の中に歯周病菌が侵入し、血管を介して心臓や全身の血管に運ばれているのではないかと考えられています。
 また、細菌だけでなく、歯周病による歯茎の炎症部位から放出される炎症物質(サイトカイン)によっても動脈硬化が引き起こされることが明らかになってきました。この炎症物質(サイトカイン)により、血管内に粥状の脂肪性沈着物(プラーク)が形成され、血液の通り道が狭くなるのです。また、この粥状の脂肪性沈着物(プラーク)が剥がれると血の塊ができて、その場で血管をつまらせたりします。また、この剥がれたプラークは、血流によって運ばれて血管の細いところで詰まったりもするのです。
脳の血管で形成されたプラークが血管を直接詰まらせたり、あるいは頸動脈や心臓でできた血の塊(血栓)やプラークが飛んできて脳の血管を塞いだりすると、脳梗塞となります。歯周病の人はそうでない人に比べて、1.66倍も脳梗塞になり易いのはこうした理由が考えられているのです。
 
●歯科医院で心臓病や脳梗塞の予防を
以上述べてきたように、歯周病やお口の衛生環境は心臓病や脳梗塞あるいは循環器疾患の発症に大きく関与している可能性があります。さらに、歯周病は循環器疾患や脳血管疾患に限らず、その他のいろいろな全身の病気にも影響を及ぼしていることが明らかになってきています。健康にお過ごしいただくためにも、歯科医院で定期的に検診やクリーニングを受けられることをお勧めいたします。