時々舌の清掃について尋ねられることがあります。今回は、舌清掃の目的や効果、清掃用具の種類や使い方について述べたいと思います。
 簡単にいうと、健康な方であれば、舌の清掃ははほとんどする必要はありません。もちろんしてはいけないということではなく毎日していただいてもなんら問題はありません。ただ、口臭が気になる方やご高齢の方については舌清掃のメリットはあるようです。

●舌苔とは:
 舌をよく見てみると、人によっては白い苔のようなものがついていることがありませんか。これは、舌の粘膜上皮が伸びたものに、細菌や食べカス、粘膜のカスなどが付着したもので、舌苔といいます。病気ではありませんので、健康な人であればそのまま放っておいても構いません。
 しかし、舌苔は口臭の原因になることがあります。これは、舌苔が嫌気性菌によって分解されると口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物(VSC)を産生するからです。歯周病や全身疾患などがない健康な方の口臭を生理的口臭と言いますが、このような口臭を抑えるのに舌ブラシは効果があるとされています。
 また、ご年配の方や薬の副作用などで唾液の流量が低下している方は、舌の細菌が繁殖して誤嚥性肺炎などのリスクが高まることがあります。そのようなリスクを抑えるためには、歯磨きに加えて舌の清掃もされたほうがより効果的にお口の中の衛生状態を保つことができ、誤嚥性肺炎などのリスクを下げることができると言われています。

●舌清掃用具について
 舌の清掃用具は大きく分けて2種類あります。ひとつはブラシタイプ。先端にループ状のブラシがついており、このブラシで舌苔をからめ取ることができます。このブラシは舌を傷つけないように、歯ブラシよりも軟らかくできており、趙極細毛となっていることが多いようです。また、清掃したプラークや食物残渣をかき出しやすいようにくぼみがついているものもあります。力を入れすぎて舌の粘膜を傷つけたりしたいように、ネック部分は軟らかく曲げられるようにできているものもあります。
 もうひとつはヘラタイプ。ゴムやシリコンでできており、ヘラの部分の突起で舌の汚れを掻きだします。一般的に柔らかく弾性があり、舌面にフィットして、舌を傷つけにくいようにできています。

●舌清掃の方法
 舌は傷つきやすいので、1日1回をめどに行うと良いでしょう。舌の粘膜は傷つきやすいので、1日に何度もみがいたり、強い力を入れすぎないように注意してください。舌がヒリヒリするようでしたら、やりすぎのサインです。通常の歯ブラシでも構わないのですが、その場合硬めのブラシは避けて柔らかめのブラシをお使いください。専用の舌ブラシの方が舌を傷つけたりすることは少ないと思います。
 舌ブラシを奥の方に入れると嘔吐反射が起きやすくなりますので、まず舌を前に思いっきり出してください。ブラシを下の粘膜の表面に添わせて、奥から手前に向かって、軽い力で数回動かします。この時息を止めていた方が嘔吐反射は起こりにくいです。舌ブラシを前後にゴシゴシ動かしたり、手前から奥に動かしたりするのはやめましょう。舌についている汚れや細菌を喉の方に送り込んでしまう恐れがあります。
 舌ブラシは水にぬらす程度で、歯磨き剤などをつける必要はありません。始める前にうがいなどで舌の表面も湿らせておくと良いでしょう。舌の清掃を行った後は、水や洗口剤などで、舌ブラシで浮かした汚れや細菌を洗い出してください。飲み込んだりしないようにされた方がよろしいかと思います。
 舌の清掃は、起きてすぐに行うのが効果的と考えられています。これは就寝時には自浄作用が低下するために、起床時には舌苔が多くついているからです。舌の清掃を行った後に歯磨きをしてください。そのほうが、誤嚥性肺炎を起こしにくいと言われています。