暑い日やスポーツの時などにスポーツドリンクなどのイオン飲料を飲まれる方は少なくないと思います。しかし、飲み方によっては虫歯を引き起こしやすくなりますので注意が必要です。
 スポーツドリンクなどのイオン飲料は体に吸収されやすく、疲労回復効果があるとされています。加えて、熱中症対策や発熱時の水分補給にも用いられるので、良いイメージをお持ちの方も少なくないと思います。
 ただ、歯科の立場からいうとスポーツドリンクの飲み方には注意していただきたいのです。近年確かに虫歯自体は減少傾向にあります。しかし、本来は虫歯になりにくいはずの前歯に虫歯ができるケースが目立つようになってきました。この原因のひとつとして、スポーツドリンクの過剰摂取があるのではないかと考えられているのです。
 なぜスポーツドリンクが虫歯になりやすいかというと、まずその水素イオン指数(pH)が低いことが挙げられます。お口の中の水素イオン指数(pH)が5.4以下になると、歯の表面のエナメル質が溶けて虫歯になりやすい状態になります。スポーツドリンクの水素イオン指数(pH)は、3.6~4.6ほどのですから、スポーツドリンクを飲むとお口の中の水素イオン指数(pH)が下がり虫歯ができやすい環境となるのです。
 さらに、スポーツドリンクに含まれている糖分も問題です。500mlのペットボトルの中に約30gの砂糖が入っています。これは、スティックシュガーの10本分です。この糖分によって、いわゆる虫歯菌が増殖し、酸を産生して虫歯を作るのです。ジュースや缶コーヒーなども同じですが、飲む時にはだらだらと長時間飲むのを避けましょう。飲んだ後は歯磨きまではしなくても、水やお茶などを飲んで、口の中に残った糖分やイオンを洗い流すようにしてください。
 また、寝る前に、スポーツドリンクを飲むのを習慣にされている方もおられるようですが、これは大変危険です。唾液には虫歯を抑える作用があるのですが、寝ている間にはほとんど出なくなります。スポーツドリンクを飲んでそのまま寝てしまうと、スポーツドリンクで虫歯ができやすい環境ができている上に、唾液の流量が下がることで虫歯の抑制機能も低下しているために、虫歯がよりできやすい環境となります。
 スポーツドリンクには塩分やカリウム、糖分なども含まれています。普通に食事が取れている状態でたくさん飲むと、かえって喉がかわき飲み過ぎてしまうことがあります。健康であれば水分補給は水やお茶をメインに考えていただければいいでしょう。くれぐれもスポーツ飲料の取りすぎには注意していだきたいと思います。