前回は3歳ぐらいまでにむし歯菌の感染がなければ、虫歯になりにくいお口になるというお話をいたしました。今回は、より具体的にむし歯菌の感染を防ぐ方法や、もし感染しても影響を最小限に止める方法について述べたいと思います。
●むし歯菌からの感染を防ぐには
むし歯菌は、唾液を介して感染します。特に近親者であるお父さんやお母さんから、感染することが多いようです。おじいさんやおばあさんあるいは兄弟や友達などからも感染することがあるでしょう。感染を防ぐには、唾液のついた箸やスプーンあるいはコップなどを共有しないようにすることが大切です。また、大人の食べかけを赤ちゃんに与えたり、熱いものをフーフーするという行為も危険です。唾液の混入が疑われるようなジュースなどの飲み物にも気を付ける必要があります。赤ちゃんをむし歯菌からまもるには、家族ぐるみ、あるいはお子さんの所属する保育所などを含めた社会ぐるみの取り組みが必要かと思われます。
●赤ちゃんをむし歯菌から守るには家族全員での口腔ケアが大切
むし歯菌の感染リスクを軽減するためには、赤ちゃんに接する機会がある人は、ご自身の持っているむし歯菌を減らす努力をする必要があります。すなわち、家族全員が、きちんと歯磨きをしたり、お口のクリーニングを定期的に受けるなどして、口腔内を衛生的に保つようにされるのがよろしいかと思います。ちなみに予防歯科先進国のスウェーデンでは、妊娠するとまずお母さんがむし歯菌の増殖を抑える効果がある乳酸菌(プロデンティス)をとり始めるということです。生まれてくる赤ちゃんのために、ご自分のむし歯菌を減らす努力をしているのです。もちろん、生まれてきた赤ちゃんにもこの乳酸菌を与えます。このことによって、むし歯菌の感染リスクが低下するだけでなく、たとえ赤ちゃんがむし歯菌に感染しても、むし歯菌が大きな勢力を持たないため、虫歯になりにくいお口の環境となるのです。
●虫歯のなりやすさは生活習慣によって決まります
こうした取り組みをしても3歳までむし歯菌の感染を完全に防ぐことは容易ではありません。たとえ3歳までむし歯菌の感染が無かったとしても、その後一生むし歯菌に感染することなく過ごすことは、現代社会においてほとんど不可能で現実的ではありません。そこで、たとえむし歯菌に感染しても、虫歯になりにくい生活習慣を身につけることが大切となってきます。「歯磨きをきちんとする」「お砂糖の入った食べ物や飲み物をだらだら食べたり飲んだりしない」などの生活習慣を乳幼児期に身につけておくと良いでしょう。特にお砂糖の摂取については、虫歯だけでなく、大人になってからの高血圧や心臓病などにも関係してきますから、節度を持つようにされた方がよろしいかと思います。二十歳までむし歯がないとその方はほぼ一生虫歯に悩まされることはないといわれています。歯が生えたら、定期的に歯科医院を受診して、検診やクリーニング、むし歯の予防処置などを受けられるのをおすすめします。