歯周病や虫歯の原因となるプラークですが、「プラークってなんですか?」という質問を受けることがあります。そこで、今回はプラークとは何かということについて説明します。
●プラークとは
 「プラーク」は、歯の表面に見られる付着物のことで、「歯垢」とも言います。ご年配の方には「歯くそ」と言ったほうがわかりやすいかもしれません。これは、歯の汚れや垢というよりは、「細菌の塊」と認識していただきたいと思います。だからこそ、プラークが虫歯や歯周病の原因となるのです。
 プラーク1mgの中には、なんと10億個もの細菌が存在するといわれています。つまようじの先でプラークをすくいとると、そこには数百億個の細菌がいることになるのです。お口の中の細菌は食べかすを栄養源にして活発化し、食後8時間ぐらいで歯の表面にプラークを形成します。食べかすが常にお口の中にある状態では、当然ながらプラークは出来やすくなります。一度プラークが形成されると、水や洗口剤などでうがいをしても取り除くことはできません。しかしながら、ブラッシングで簡単に落とすことができます。虫歯や歯周病の原因となるプラークを歯につけたままにしないために、1日3回の食後のブラッシングは有効かと思われます。

●バイオフィルム
プラークを長い間取り除かないで放置しておくと、「バイオフィルム」となります。バイオフィルムとは、ちょっと聴き慣れない言葉かもしれませんが、実は身近にあるものなのです。台所の排水溝にある「ぬめり」がそうです。バイオフィルムは、細菌の塊と、細菌の産生するぬるぬるした基質(菌体外多糖)、水のチャネルなどから出来ています。このバイオフィルムの中では、プラーク中にいた細菌同士がネットワークを形成します。「クオルモン」という細菌性のホルモンを使って情報伝達を行い、互いに助け合って生きているのです。バイオフィルム内の細菌は菌体外多糖の膜で保護されており、貪食細胞や抗体、抗菌薬などに抵抗性を示します。この菌体外多糖の膜のせいで、薬剤の効果は、浮遊状態の細菌に比べて250分の1にまで減弱されてしまうという報告があります。
 プラークとバイオフィルムは、上述したようにちょっとした定義の違いはありますが、本質的には同じものです。いずれも、含嗽剤などでは取り除くことができません。ブラッシングや歯科医院で行うプロフェッショナルクリーニングなどで、機械的に取り除かなければキレイにならないものです。言い換えれば、ブラッシングをせずに含嗽剤だけで済ませたりするのはほとんど意味がないとも言えます。ただしブラッシングなどにより、バイオフィルムから浮遊させた細菌には、含嗽剤は効果があると考えられます。