洗口剤(うがい薬)とは、うがい時に使用することで、う蝕予防や歯周病予防、あるいは口臭予防などが期待できる液体の製品をいいます。洗口剤は、歯肉縁上のプラーク(歯垢)を破壊したり、殺菌したりする効果があります。また、プラーク(歯垢)の再沈着を抑制することが認められているものもあり、洗口剤をうまく使えば、虫歯や歯周病の予防する効果が期待できます。しかし、残念なことに日本では洗口剤はあまり普及していないようです。アメリカでは63%の方が使用しているのに対して、日本ではその半分、33%の人しか使用していないという報告があります。実際、どの洗口剤をどのように使えば良いのか、お悩み方もおられるのでははないでしょうか。今回は、洗口剤の種類や効能、効果的な使い方について述べ、洗口剤を選ぶときの参考にしていただければと思います。

 洗口剤にはその作用機序から大きく分けて2つのグループに分けることができます。ひとつは、「歯面やプラークの表面に付着して作用する」タイプのものと、もうひとつは「プラークの深部へ浸透して作用する」タイプのものです。

●歯面やプラークの表面に付着して作用する洗口剤

このタイプの洗口剤は、歯面やプラークなどの表面に付着することで、殺菌作用を発揮し、プラークの形成を抑制する効果が期待できます。その主成分としてグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)を含むものと塩化セチルピリジニウム(CPC)を含むものがあります。

  • グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)を含むもの:この薬剤を含む洗口剤は海外では広く使用されています。虫歯や歯周病予防をお考えであれば、まずはこの薬剤を含む洗口剤を試していただきたいと思います。商品としては、ウエルテック社のコンクールF、サンスター社のバトラーCHX洗口液などがあります。
  • 塩化セチルピリジニウム(CPC)を含むもの:この薬剤は、低濃度でも細菌に結合し作用することが特徴で、毒性や刺激を少なくすることができます。商品としは、ライオン社のシステマSP-Tメディカルガーグル、サンスター社のガムデンタルリンス ナイトケア、アース製薬社のモンダミンプレミアムケアなどがあります。

●プラーク深部へ浸透して作用する薬剤

 このタイプの洗口剤は、歯面やプラーク(歯垢)表面への結合は弱いが、プラーク(歯垢)の中まで薬剤が浸透することによって殺菌性を示す薬剤が主成分となっているものです。

  • ポピドンヨード:この薬剤は口腔細菌全般に対して強い殺菌作用を示します。稀にこの薬剤にアレルギーのある方がおられますので注意が必要です。色や匂いに抵抗なければ良い薬剤だと思います。塩野義製薬社のイソジンうがい薬があります。
  • エッセンシャルオイル:エッセンシャルオイルは、植物に含まれる有機化合物で、フェノールを主成分とする複数の天然由来成分を含みます。殺菌作用の他に抗炎症作用もあります。ジョンソン・エンド・ジョンソン社のリステリンがあります。
  • 洗口剤の使い方について 

 洗口剤は、プラーク(歯垢)の付着抑制や細菌の増殖抑制効果が期待できるため、虫歯になりやすい人や歯周病の方あるいは歯周病予防を考えておられる方などにはお勧めいたします。また口臭抑制効果もありますので、口臭が気になる方にも良いでしょう。

 使い方は、各薬剤の説明書等に詳しく書いてありますので、それを参考にしていただければよろしいかと思います。ただ、大まかに言って、各グループの洗口剤の薬効を考えると以下のような使い方が、より効果的ではないかと考えます。まず、「歯面やプラークの表面に付着して作用する洗口剤」のグループのものは、できれば丁寧に歯磨きした後に、あまり時間を開けずに使われるのが良いでしょう。例えばガムデンタルリンス・ナイトケアなどは、夜歯磨きをしてしっかりとプラーク(歯垢)を除去した後に仕上げとして使われるとより効果的と思われます。

 一方、「プラーク深部へ浸透して作用する薬剤のグループ」の洗口剤、例えばリステリンなどは、プラーク(歯垢)内に浸透して作用することから、プラーク(歯垢)の形成が始まってから用いる方がより効果的であると思われます。すなわち、この薬剤は歯磨き直後よりはむしろ歯磨きをして2〜3時間経ってから用いる方が良いようです。ですので、昼間歯磨きがなかなかできにくい方とか、夜歯磨きをして就寝までに時間がある方は就寝前にこのような洗口剤を使用されると良いかもしれません。