歯科検診を定期的に受けておられる方は問題がある時だけ受診される方に比べて、将来に残せる歯の数が違ってきます。ある研究によると、その差は50歳ぐらいから次第に大きくなり、80歳では前者は23本以上の歯が残っているのに対して後者は7本という結果が示されています。
また、80歳時における平均残存歯数を国別でみてみると、スウェーデンでは20本、アメリカでは18本でしたが、日本は15本でした。定期検診率をみてみると、スウェーデンでは90%、アメリカでは80%であるのに対して、日本は5%とかなり低い水準となっており、残存歯数の差は定期検診率に比例すると考えられています。
これらのことから、歯のトラブルを少なくして、一生ご自分の歯で美味しく食事を摂るためには自覚症状がなくても定期的に歯科検診やクリーニングを受けることが大切なのは明らかです。

それではどのくらいの頻度で歯科検診を受けるのが良いのでしょうか? 検診というと「一年に一回」というイメージを持っておられる方も少なくないと思います。病気の発見だけだと一年に一回程度でも良いかもしれません。しかし、歯科の検診は病気を発見するための検査だけでなく、多くの場合細菌の塊や歯石を取り除くスケーリングなどの口腔清掃(プロフェッショナルケア)も行います。この口腔清掃は一年に一回ではその効果がほとんどないとされており、3〜6ヶ月の間隔が推奨されています。

その根拠のひとつとして、ある有名な歯周病治療の論文があります。その研究によると、「歯周病治療が終了した後、適切に歯磨きなどのセルフケアを行っていたとしても歯周ポケット内の歯周病菌の数は3ヶ月でもとに戻ってしまう」とのことです。もう少し詳しく述べると、歯周ポケットの中は歯ブラシが届かないため細菌の集合体であるプラーク(歯垢)が残存してしまいます。このプラーク(歯垢)は3ヶ月もすると成熟したバイオフィルムとなり病気の発症の温床となるのです。言い方をかえれば、ご自宅での口腔清掃が適切にできていれば、ポケット内に新たに蓄積したプラーク(歯垢)が病原性をもつようになるには3ヶ月程かかるとも言えます。

このことは歯周ポケットだけでなく、磨き残しのプラーク(歯垢)についても同じです。いくらきれいに歯磨きをしていても歯ブラシが届かない部位があり磨き残しが生じてしまいます。磨き残したプラーク(歯垢)は数日で歯ブラシなどでは取り除けなくなってしまい、3ヶ月後には病原性をもつバイオフィルムと変化します。このバイオフィルムを取り除くには歯科医院で行われる専門的口腔清掃処置であるプロフェッショナルケアが必要です。3ヶ月に一回この処置を受けていただき、病原性を持ちはじめたバイオフィルムを取り除けば、健康なお口の状態が保てることになります。ただし、これには、適切に歯磨きなどのセルフケアが行われていることが要件となっています。

以上のことから、プロフェッショナルケアを伴う歯科検診の間隔は「基本的には3ヶ月」程度が適切と考えられています。ただし、お口の状態によっては受診間隔を最大6ヶ月までのばすことも可能とされています。適切な定期検診の間隔については、個々のお口の状態に応じて設定する必要がありますから、かかりつけの歯科医院で相談されるのがよろしいかと思います