●唾液の減少と口腔乾燥
加齢に伴って唾液を作る組織である唾液腺の機能が低下して唾液の分泌量が少なくなってきます。そのため高齢者になるとどうしてもお口が乾きやすくなってきます。
これは加齢に伴う体の変化ですので、いたしかたないこともあるのですが、健康な方であれば、よく噛むことによって、自然と唾液の流出が促されるようになります。そのためには、治療が必要な歯や合わない入れ歯を放置したりなどせず、定期的に検診やクリーニングをうけてお口のなかを清潔にして、しっかり噛むことができようにしておくことが大切です。
しかし、唾液の減少は糖尿病などの病気によっても起こりますし、ストレスがたまっているときも唾液の分泌量は減少します。口呼吸をする癖がある方もお口の中が乾燥している状態になりやすいです。また、鎮痛剤や降圧剤(血圧を下げる薬)、抗うつ薬やパーキンソン病の治療薬などの薬によっても唾液の分泌量が減ってしまうことがあります。さらに、シェーグレン症候群という自己免疫疾患によっても唾液はでにくくなりますので、このようなことが気になる方はかかりつけ医あるいは内科等を受診されるとよいでしょう。
●唾液の働き
唾液はお口の乾燥を防ぐだけでなく、食べ物を飲み込みやすくする作用もあります。加えて、お口の中の環境を良好に保つという役割もあります。もう少し詳しく述べますと次のような作用があります。
①抗菌作用:唾液には、細菌などの感染を防ぐラクトフェリンやリゾチームなどの抗菌物質が含まれています。
②歯の再石灰化作用:甘いものや食べ物をとることによって虫歯菌が出す酸で溶かされた歯の修復を行います。
③自浄作用:お口の中の食べかすや細菌を洗い流し、お口を清潔に保つ作用があります。
④消化作用:唾液の中にはアミラーゼという消化酵素があり、食べ物の消化吸収をうながします。
⑤潤滑作用:お口の中を潤して、食べたり、喋ったりするのを助けます。
⑥味覚作用:食べ物の成分を溶かし出して、味を感じやすくします。
⑦緩衝作用:細菌によって出された酸やすっぱい食べ物でお口の中が酸性になり、虫歯になりやすくなります。この酸性になったお口の中を中性に戻します。
●唾液の分泌をよくするには
唾液の分泌が少なくなると、こうした唾液の働きが弱くなります。その結果、虫歯や歯周病になりやすくなります。また、食事がしにくくなったりすることもあります。
唾液量を増やすには、薬もありますが唾液腺マッサージという方法もあります。これは自宅で簡単にできますので、気になる方は食事の前とかにやってみてください。
① 耳下腺マッサージ:耳たぶのやや前方、上の奥歯あたりに指を当てて、揃えた指でゆっくりやさしくマッサージします。奥歯あたりに唾液の流出が感じられます。
② 顎下腺マッサージ:顎の骨のエラ(下顎角)よりすこし前の下顎の骨の内側の柔らかい部分を、指で下から上に向かって軽くおしながらマッサージします。舌の前の方の下に唾液がでてくるのを感じることができます。
③ 舌下腺マッサージ:顎の先(オトガイ)の部分の骨の内側を、親指で上に押すようにしながらマッサージします。これも舌の前の方の下に唾液の流出が感じられます。
マッサージだけでは、不十分という場合には人工唾液を使用するとよいでしょう。これには、サリベートという処方薬と市販薬としてライオンのアクアバランスなどの商品があります。お近くの歯科医院でも、お口の乾燥をやわらげる薬として、保湿性薬剤や保湿ジェル、保湿力の高い洗口材などをご購入いただけると思います。
ただし、上述したように、全身の病気や薬によって唾液がでにくくなったりしますので、その可能性がある方は自己判断をせず、まずはかかりつけ医あるいは内科等を受診されることをおすすめします。