以前にも述べたように、歯ブラシだけでは、歯と歯の間のプラーク(歯垢)を取り除くことは難しいです。そのため歯間ブラシやデンタルフロスといった歯と歯の間を清掃する用具(歯間清掃用具)を用いる必要があります。以前に歯間ブラシをご紹介させていただきましたので、今回はデンタルフロス(糸ようじ)について述べたいと思います。

効果 
 歯と歯の間の隙間(歯間部)は、虫歯や歯周病の原因となるプラーク(歯垢)が溜まりやすく、虫歯や歯周病が発生しやすい場所です。この歯間部のプラーク(歯垢)は歯ブラシだけだと58%しか取り除くことができません。しかし、歯ブラシに加えてデンタルフロスや歯間ブラシを使うと約90%のプラーク(歯垢)を取り除くことができます。プラーク(歯垢)の残存率でいうと40%と10%ですから、歯についているプラーク(歯垢)の量は4倍の差があるといえます。これに相応して、歯間ブラシやデンタルフロスを使用すると歯周病が改善することが示されています。
 このように、デンタルフロスは歯と歯の間(歯間部)のプラーク(歯垢)を効率よく取り除くことができますが、利点はこれだけではありません。歯と歯の間(歯間部)の虫歯は、いわゆる隠れ虫歯と呼ばれ、かなり大きくなるまで肉眼では確認が難しいものも少なくありません。しかし、デンタルフロスを使用していると、歯と歯の間の歯面のちょっとしたざらつきや引っかかりで、虫歯の発見にいたることがあるのです

デンタルフロスの種類

糸の種類
 デンタルフロスの糸は一本に見えますが、実は、歯と歯の間のプラーク(歯垢)を絡めとりやすくするために、数多くのナイロンやポリエステルなどの細くて弾力性のある繊維をより合わせて作られています。
 この糸には、ワックスをコーティングしてワックスタイプと、ワックスのコーティングがないノンワックスタイプがあります。どちらかというと一般的にはワックスタイプのものをおすすめしています。確かにノンワックスタイプは清掃効率が高いのですが、歯間部に挿入しづらく、引っかかって切れてしまったりすることがあるため、慣れないと使いづらいかと思われます。一方、ワックスタイプは、歯間部に挿入しやすく、ばらけたり切れたりしにくいのが特徴です。

ホルダータイプとロールタイプ
 デンタルフロスには、糸が柄についているホルダータイプと、糸だけのロールタイプがあります。 
 ホルダータイプのものは、ホルダーの形がFのような形をしたF字型とY
の形をしたY字型とがあります。F字型のものは、とっつきやすいため、初心者の方あるいはご年配の方や不器用な方などにも、幅広くお使いいただけるのではないかと思います。一方、Y字型は臼歯部への使用に向いています。前歯への使用は若干難しいこともありますので、場合によっては前歯はF字型、奥歯はY字型といったような使い分けが必要かもしれません。
 ロールタイプのものはデンタルフロスをご自分の指に巻きつけて使用します。その方法は、ネットで多くの動画が出ていますので参照してください。最初は、若干使いにくいと感じられるかもしれませんが、欧米では小学生でも使っているのですから、そんなには難しくはないと思います。慣れればこのタイプのものの方が逆に使いやすいかもしれません。また、低コストであるということも利点です。コンパクトなものもありますから、携帯することも可能です。一般的にはジョンソンエンドジョンソン社のワックスタイプが人気が高いかと思います。ちなみに私は、オーラルケア社のフロアフロスを使っています。

使用方法
 取り残したプラーク(歯垢)は2〜3日で石灰化が始まり取り除きにくくなるため、最低でも1日1回はデンタルフロスを通す習慣が望ましいです。ではいつするかというと、就寝前あるいは夕食後にされるのが良いのではないかと思います。これは、就寝中は唾液の分泌が減少するため、細菌が増殖しやすくなりためです。ただし、歯肉炎や歯周病がある方は、最低でも一日2回、朝晩の使用をお勧めしています。
 デンタルフロスと歯間ブラシの使い分けについては、できれば両方を使われるのが理想的です。どちらかと言われると、個人的にはデンタルフロスをお勧めします。デンタルフロスも歯間ブラシも使ったことがないという方には、歯間ブラシの方がとっつきやすいかと思われます。ただ、歯並びなどお口の状態によっては歯間ブラシが入りにくい部位もあります。そのような部位については必然的にデンタルフロスの使用になると思います。一方、ブリッジや被せがつながっている連結冠などにはフロスははいりませんから、その部分については歯間ブラシのみの使用になります。被せが歯によく合っていないものや被せがザラザラしているよう場合には、デンタルフロスが引っかかったり切れてしまったりするので、とりあえず歯間ブラシをお使いいただいて、早めにお近くの歯医者さんに相談されるのがよろしいでしょう。