前回述べたように虫歯はプラークの中にいる虫歯菌によって起こります。ですので、むし歯のできやすいところは、プラークのつきやすいところ、とりにくいところです。一般的には、奥歯のしわや溝などのへこみのあるところ、歯の根元で歯肉に近いところ、そして歯と歯の間です。このようなところは歯磨きで磨き残しが出やすいところですので、意識して歯磨きをすることが大切です。

歯と歯の間は糸ようじ(デンタルフロス)で清掃していただくと良いでしょう。欧米に比べて日本では糸ようじを使っている方はまだまだ少ないのが現状です。アメリカ人と結婚したある女性の方が「主人から毎晩フロスしたか聞かれるのよ」と言われていました。そのくらい欧米では糸ようじは普通のことなのです。最初はちょっと使いにくく感じられるかもしれませんが、欧米では子供でも使っているのですから、慣れれば簡単に使えるようになります。最近はネットの動画で糸ようじ使い方を見ることができますのでチェックしてみてください。まずは糸ようじの正しい持ち方を覚えてくだい。

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治療した歯はもう虫歯にならないと思っておられる方もいらっしゃるようですが、むし歯治療をした歯の詰めた材料と歯の境界付近は、プラークがたまりやすく虫歯になりやすいところです。これは治療した歯が再び虫歯になるということで、二次う蝕(虫歯)と言います。この虫歯は、歯の根っこに近い部分に虫歯ができますので、治療が難しくなることが少なくありません。また、神経を取ってしまっている歯は、虫歯が痛みなく進行しますから、自己判断は危険です。被せが取れたということで来院される方の中には、被せの中で治療できないぐらいにまで虫歯が大きくなっており、残念ながら抜歯に至ることもあります。おそらく虫歯で歯を失うことになる多くはこの二次う蝕であろうと思われます。二次う蝕は見えにくいところにできやすく、痛みなどの症状もなく進行することが多いので、被せなどを入れておられる方は、再び虫歯にならないようしっかり歯磨きをすることと、定期検診でこまめに虫歯チェックを受けられることをお勧めします。

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高齢者になると歯肉が少しずつ減ってきて、歯の根っこが出てきます。この部分の表面はエナメル質よりも酸に溶けやすい象牙質で、むし歯になりやすいところです。この部分の虫歯のことを根面う蝕(根面カリエス)と言います。この虫歯は根っこに近いこともあり、治療が難しいことが少なくありません。また、治療のために健康な歯の部分を多く失うこともあります。このようなことから、歯を守るためにはやはり根面う蝕(根面カリエス)を作らないようにすることが大切なのは言うまでもありません。

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歯の根っこが出ている部分は、歯磨きが難しく磨き残しが出やすいところです。しかしこの部分からプラークをきちんと取り除くように歯磨きをしていただきたいのです。その際、フッ素の多く入った歯磨き剤を使うと、歯の耐酸性(虫歯菌が作る酸に対する耐性)が強化され虫歯のできにくい歯になります。歯磨き剤についてはまたの機会に詳しく述べますが、市販のものではなく歯科医院で購入できる1000PPM程度かそれ以上のフッ素が入った歯磨き剤がよろしいかと思います。加えて、より効果的に根面う蝕(根面カリエス)から歯を守るために、歯科医院で定期的にクリーニングとフッ素のコーティングなどの予防処置を受けられることをお勧めします。