「かため」の歯ブラシの方が、歯についたプラーク(歯垢)や汚れなどの沈着物などを効率的に落としやすいように感じておられる方が少なくないのではないでしょうか。一般的な汚れであれば物理的な力が強いほど効率的に落とせます。しかしながら、当然のことですが、あまり強い力をかけてしまうと磨いた表面に傷がつく恐れがあります。このことは歯磨きについても同じです。いくら歯ブラシでも強い力でゴシゴシこすり続ければ歯の表面は傷ついてしまいます。力の入れ具合によっては歯だけでなく歯茎をも傷つけてしまう恐れもあります。さらに歯磨き剤には歯の汚れが取れやすくするように研磨剤が含まれているものもあります。そのような歯磨き剤を使って強い力で歯を磨けば歯の表面が削れてしまうこともありますから注意が必要です。

平坦な表面であれば、「かため」の歯ブラシでも容易にきれいに磨けます。しかしながら、細かいところはどうでしょうか。実際、歯は丸みを帯びており、凸凹もあり複雑な形をしています。歯磨きで磨き残しがでやすいのは、歯と歯茎の境目や歯と歯の間です。「かため」の歯ブラシだとそのような細かいところまできれいに磨くのは難しいのではないでしょうか。ある程度歯ブラシの毛先がしなった方が歯ブラシの毛先が細かいところまで届きやすいように思います。

歯磨きの目的は、歯についた細菌の塊であるプラーク(歯垢)を落とすことです。プラーク(歯垢)はブラシが軽く触るだけで取り除くことができます。とくに「かため」の歯ブラシで強い力を加えなくても、「ふつう」の硬さのもので充分除去できます。問題は毛先がプラークに到達できるかどうかです。磨き残しを少なくするためには、力より到達性を重視したほうが有利なように思われます。

「やわらかめ」の歯ブラシを使われておられる方もおられます。「やわらかめ」の歯ブラシは、歯と歯の間などの細かい部位まで毛先が入りやすいのが利点です。また、毛先がやわらかいため歯茎を痛めにくいです。歯にあたる感じがやわらかくて気持ち良いという方もおられます。「やわらかめ」の歯ブラシであってもプラーク除去に関しては除去効率が劣るということはありません。ただ、やわらかいだけに耐久性が若干劣るのが欠点かもしれません。多少頻繁に歯ブラシを交換されるのであれば、なんら問題はないように思います。当院では、歯茎に炎症があり出血しやすいとか、痛くて磨けないような時、あるいは手術後早期には「やわらかめ」の歯ブラシをおすすめしています。
 
以上のことから、通常の歯磨きには、「ふつう」のかたさのものをお勧めしています。お好みで、「やわらかめ」の歯ブラシはお使いいただいて構いませんが、「かため」の歯ブラシはお避けいただいた方が無難なように思われます。磨きたかもひとそれぞれで、また好みもひとそれぞれです。ご自分にあった歯ブラシについてお近くの歯科医院で一度相談されるのも良いかもしれません。