前回、口内炎の治療にステロイド軟膏が使われることが多いということを述べました。しかしその中には、本当はステロイドを使わない方が良いものもあ流ということを今回は述べたいと思います。
ステロイド軟膏の適切な使用のためには、まず適切な診断がなされることが大切です。しかし、適切な診断がなされないままとりあえずステロイド軟膏が使用されていることが少ないのが現状です。これを避けるためには、自己判断や経験の少ない医師や歯科医師に診てもらわずに、臨床経験が豊富な口腔外科専門医などに診断してもらう方がよろしいかと思います。その際、きちんと診断名を聞いて、その対処法の説明を受けるようにした方が良いかと思います。
よく口内炎と間違って診断されているものの中に褥瘡性潰瘍というものがあります。これは入れ歯などが当たってできる傷です。粘膜の表面がなくなって潰瘍になり、しばしば周囲に発赤を伴うことがあります。これは口内炎ではなく傷ですので、ステロイドを使用すると治癒を遅らせます。入れ歯をはずすなど粘膜を傷つけたりしている原因を除去して、うがい薬などで感染予防などにつとめれば、大きさにもよりますが、だいたい1〜2週間のうちに治癒します。
いわゆる口内炎の中で最もステロイドを使ってはいけないものがあります。それはカンジダ症です。ステロイドによって病状が悪化するからです。他院で処方されたステロイド軟膏を使用したために、カンジダ症にもなってしまい、もとの粘膜の病気がわかりにくくなっていた症例もあります。
一般的によく知られているのは急性偽膜生カンジダ症です。これはお口の中の粘膜に白いカビのようなものが付着したようになる病気です。実はカンジダ菌は真菌と言ってカビの一種なのです。この付着物はガーゼで拭うと簡単にはがれます。白い付着物の下の粘膜は炎症のため若干赤みを帯びていることがあります。このタイプのカンジダ症なら口腔外科専門医であればまず診断を間違えることはないでしょう。しかし、カンジダ症は色々な病態を取るのです。慢性のものになると口腔外科専門医であっても診断が難しいものもあります。カンジダ症の詳しい病態については説明が長くなりすぎるため今回は割愛します。ここでは、ステロイドを使ってはいけないカンジダ症などの病気があるため、「とりあえずステロイドの軟膏」というように安易にステロイドの軟膏を使わないようにすることが大切だということを理解していただきたいのです。
それではどうすれば良いかというと、まずはうがいをしていただきたいのです。ヨード過敏症でない限りはイソジンで良いでしょう。1日7.8回ぐらいの頻度でうがいで、たいていの口内炎やちょっとした傷なら1〜2週間のうちに良くなってきます。それでも症状がはかばかしくない場合や心配な場合はお近くの口腔外科専門医に診てもらってください。