毎日使う歯ブラシ。自分にあった歯ブラシを選ぶにはどうしたら良いのか、また今使っている歯ブラシは自分にあっているのか疑問に思っておられる方も少なくないと思います。現在日本では、本当にたくさんの種類の歯ブラシが売られています。コンビニでさえも数種類の歯ブラシがおいてありますし、テレビでも歯ブラシのコマーシャルをみない日はないぐらいです。あまりの多さからどれを選んで良いのかわからなくなるのも当然かもしれません。
 歯ブラシを選ぶ時、多くの方は、歯ブラシの色やデザイン、あるいは価格などで選ばれているのではないかと思います。もちろん自分の気に入った色やデザインのものは歯磨きのモチベーションをあげるために必要かもしれません。また、価格についても、歯ブラシは毎日使うものですから、あまり高価なものでは継続しづらくなることも考えられます。今回は一般の方がご自分にあった歯ブラシを選ぶためのいくつかのポイントをまとめてみましたので、ご参考になればと思っております。

1. 柄(持ち手)の形
 歯を磨く時、通常はペングリップといって親指と人差し指と中指の3本でペンを持つように柄の部分を持ちます。その持ち方で持ってみて、どんな角度でも持ちやすく動かしやすいと感じられるものが良いと思います。細すぎると安定しませんし太すぎると力が入りすぎるかもしれません。個人的には断面が楕円形のものかが使いやすいように思います。
 柄はストレートなものと曲がっているものがありますが、ストレートのものの方が使いやすいように思います。曲がっているものは上の奥歯が磨きにくくなる傾向があるようです。また、突起や飾りがあるものは動かすのに邪魔になるかもしれませんのでシンプルな形の方が使いやすいかと思われます。ネック部分は太さが変わらないものよりは幾分でも細くなっている方が奥歯まで届きやすいと感じられる方が多いようです。

2. ブラシの大きさ
 歯ブラシのブラシ部分のサイズは、成人の場合、縦の長さは約2CM程度のものが使いやすいかと思います。これは、ブラシの植わっている部分の縦の長さがご自分の親指の幅とほぼ一緒になると考えてください。あるいは人差し指の第一関節までの長さと同じと考えていただいても結構です。幅は1CM以下で、ブラシが縦に3列並んでいるものが使いやすいようです。
 歯ブラシのヘッドは、小さめのものの方が奥歯まで届きやすいです。ただし、あまり小さすぎると、歯ブラシが歯面に対して安定しづらく、使いづらかったり、歯みがきの効率が悪くなったりするかもしれません。お口の大きさや歯の生えかた、あるいは唇や頬の筋肉の緊張度など個人差がありますので、奥歯まで無理なく届き、磨きやすいと感じられる「自分にあった大きさ」のものを選ばれると良いと思います。
 
3ブラシの材質
 歯ブラシの毛の材質については、いろいろな素材が使われていますが、透明なナイロン製のものをお勧めします。動物の毛でできたものもありますが、細菌などが付着しやすく不潔になりやすいためお薦めできません。また、ブラシに色が付いているものもありますが、色素の人体への影響や、ブラシの替えどきを知る上からも、無色透明なものをお勧めします。透明なブラシが白く濁ってきたりしたら、材質が劣化してきたということですから、そろそろ交換時期がきたということになります。
 
4ブラシの形態
 毛先の形態は、揃っているものとギザギザになっているものとがありますが、一般的には揃っているものの方が磨きやすいと思います。メーカーによると、ギザギザのものは歯と歯の間にブラシが入るようにということらしいのですが、歯と歯の間はギザギザの歯ブラシを使うより歯間ブラシや糸ようじを使っていただいた方が効率よくきれいに磨けます。

5ブラシの硬さ
 歯ブラシの毛の硬さは好みの問題もありますが、歯茎の状態に合わせてお選びいただくと良いでしょう。
 「ふつう」は、歯茎の状態が健康な人に使っていただけるように考えられています。そのため、一般的にはこの硬さのものがお薦めです。
 歯茎に歯肉炎や歯周病があって「ふつう」の硬さの歯ブラシでは磨くと出血したり痛かったりする人は「やわらかめ」の歯ブラシで丁寧に磨いてみてください。そして、症状がよくなったら「ふつう」の硬さのものにかえましょう。お好みによっては、健康な方でも「やわらかめ」のものをお使いいただいても構いません。柔らかすぎてプラーク(歯垢)が取れないということはありません。ただし、歯に当てた時に毛先が滑ってしまうような感じがあるようでしたら「ふつう」の硬さの方が良いかもしれません。
 「かため」の歯ブラシは、一見プラークを落とす力が高そうに思えますが、力を加えて磨くことが多く、そのため逆に磨き残しが多く出たり、歯茎や歯を炒めたりする可能性があります。特に、歯茎が痩せて歯の根っこの部分が出ている人は注意が必要です。

 以上述べてきたことを参考に、自分にとって「磨きやすい」と感じられる一本を選んでいただければと思います。
 加えて、歯と歯の間は、歯間ブラシや糸ようじなどの補助的清掃用具を使われることをお勧めいたします。また、どうしても奥歯の磨き残しがある方は、一本磨き用の歯ブラシ(タフト)を使われてみてはいかがでしょう。

 歯磨きは、簡単に言うと歯からプラーク(歯垢)を取り除く作業です。ひとつの指標として、歯磨き後の磨き残しが20%以下になっていれば、綺麗に磨けているといえます。今使っている歯ブラシで歯磨きをして、歯医者さんで磨き残しをチェックしてもらえば、磨けているかどうか簡単にわかります。逆に自分で磨いているつもりでも、磨き残しが多いと実は磨けていないということになります。歯医者さんで正しい歯磨きの仕方を教えてもらったり、ご自分にあった歯ブラシのアドバイスをもらうなどされてはいかがでしょうか。私たちの歯科医院では、「歯を削る」だけでなく、こうした歯を守るためのいわゆる「予防歯科」も大切な仕事のひとつだと考えています。