学校検診などで歯肉炎を指摘されたお子様も少なくないと思います。実は、厚生労働省の「歯科疾患実態調査」によると小・中学生の4割が歯肉炎だというデータがあります。また、子どもの歯肉炎は年々増加傾向にあるとも言われています。そこで今回は子どもの歯肉炎について述べてみたいと思います。
⬛歯肉炎とは
「歯肉炎」とは、歯茎が炎症のため、腫れたり出血しやすくなっている状態のことを言います。この段階では、歯を支えている歯槽骨などの歯周組織には大きな変化は見られません。しかしながら、子どもだからとか痛くないからといって、放置してはいけません。将来歯周病になって歯が抜け落ちてしまう可能性もありますのできちんと治療をする必要があります。
⬛子供の歯肉炎の種類
子どもの歯肉炎には次のようなものがあります。
●不潔性歯肉炎
子どもの歯肉炎で最も多いのがこの歯肉炎です。歯磨きができていない所にプラーク(歯垢)が溜まることによって、歯茎の発赤、腫脹、出血、痛み炎症症状が起こります。丁寧に歯磨きをして歯についたプラーク(歯垢)を取り除いたり、歯石を取ったりすることで、多くの場合比較的早期に治癒します。しかしながら、長い間放置したりすると、重症化して、出血や痛みのために歯磨きや歯石除去が困難となる場合もあります。さらに、歯茎が腫れたまま硬くなってしまって元にもどりにくくなってしまうこともあります。口呼吸の癖がある場合には、治りにくいものもありますので注意が必要です。いずれにせよ早期発見早期治療が最善の方法であることには違いありません。
●萌出性歯肉炎(永久歯が生える時に起こる)
永久歯が生える時に歯茎に炎症症状が一時的に起こることがあります。奥歯によく見られますが、歯が生えるに従って炎症は治るのが一般的です。痛みや腫れが激しい場合には、うがい薬で消毒したり、鎮痛剤などの投薬処置を行う場合もあります。
●思春期性歯肉炎(10〜15歳)
思春期のホルモン変化により、歯肉炎が起こりやすくなります。なかには著しく歯茎が腫れたり出血したりするものもあります。清潔にしていても起こるものもありますが、主な原因は磨き残したプラーク(歯垢)に中の細菌によるものですから、丁寧な歯磨きとクリーニングで軽快することが多いようです。
●若年性歯周炎(13〜15歳)
頻度は多くありませんが、前歯と第一大臼歯周辺に多く見られる歯周炎です。深いポケットに加えて、歯を支えている骨(歯槽骨)の破壊、吸収が起こるため、歯の動揺や移動も見られることがあります。なかには難しいものもありますが、可能性があれば、なるべく早期に治療をすることが望まれます。
⬛歯肉炎と診断されたら
歯肉炎と診断されても、それほど心配する必要はありません。正しく歯磨きをして、定期的なクリーニングなどの処置を受けたりして、しっかりケアしてあげれば、多くの場合改善します。ただ小学生ぐらいだと、乳歯と永久歯が混在していたりするため、自分ひとりでキレイに歯磨きをすることは難しいかもしれません。子供の成長期でいろいろ難しいことがあるかもしれませんが、毎日でなくてもいいので、ケースによっては「保護者磨き」も考えていただく必要があるかもしれません。
「歯肉炎」は「歯周病」への移行させないようにすることが大切です。たかが「歯肉炎」と、放っておかずに、ご家庭での正しい歯磨きと歯科医院でのクリーニング(プロフェッショナルケア)でしっかり治療しましょう。
当院ではお子様の場合でも、3〜4ヶ月ごとの定期検診と歯科衛生士によるクリーニング(プロフェッショナルケア)をおすすめしています。