⬛子供の歯やお口のケガについて

 子供が前歯を失う一番の原因は、外傷によるものです。歩き始めの1〜2歳ごろと活動量が多くなる8〜10歳ごろは転倒しやすく、歯やお口のケガが多くなります。最近は事故やスポーツによる外傷も少なくありません。今回は、歯やお口を怪我した時にすべきことについて述べたいと思います。

●歯だけでなく全身をみてください
 歯が折れたり抜けたり、口の中を切ったりしている時には、顔面に強い衝撃が加わっている可能性があります。まずは急いで全身をみて、脳や目、あるいは鼻や耳などにも異常はないか確認してください。出血がある場合はタオルやハンカチなどなんでも良いですから、出血部位を抑えて止血を試みるようにしましょう。当然ながら、意識がはっきりしない場合や出血がひどい場合には、安静にして救急車を呼ぶなどしてください。また、止血処置や抜けたり欠けたりした歯の処置の後でも構いませんが、お口が開けられるか噛み合わせは正しいかなど確認することも大切です。

●歯が抜けた時
 歯が抜け落ちた時は、抜け落ちた歯を、できれば保存液か牛乳に入れてなるべく早くお近くの歯科医院を受診してください。早ければ早いほど抜け落ちた歯がまた使えるようになる可能性が高まります。
 近くに保存液や牛乳がない場合は、ラップやビニールで覆い乾燥を防ぐようにしてください。1時間以内に再殖処置を受けられれば、歯が使えるようになるかもしれません。その際、汚れを取るために塩素の入った水道水などで抜けおちた歯を洗うのは避けてください。
 すぐに受診できない場合は、牛乳に入れ冷蔵保存するか、保存液に入れる必要があります。保存液ですと常温で約1日ぐらいは保管できます。尚、保存液は大手通販会社でも取り扱いがあるようです。

●歯が折れたりグラグラする場合
 なるべく早くできればその日の中にお近くの歯科医院を受診して下さい。時間が経つにつれ痛みが増してくる場合もあります。たいしたことはないからと放置しない方がよろしいかと思います。折れた歯の「かけら」がある場合には、それも一緒に持参してください。接着剤などで歯の修復に使うことができるかもしれません。

●歯の色が変わったら
 ぶつけて歯の色が変わった場合、直後であればいわゆる歯の神経が内出血を起こしている可能性があります。後で歯の神経が死んでしまう可能性がありますので、歯科医院で経過を診てもらう必要があります。
 ぶつけてしばらく経ってから、歯の色が黒ずんできたような場合には、歯の神経が死んて壊死を起こしていることが考えられます。放置は危険ですので、お近くの歯科医院で診てもらってください。

●唇や歯ぐきを切った場合
 唇や歯ぐきを切った場合には、まず浅い傷であれば、傷を圧迫するだけで出血は止まると思います。筋肉まで傷が達していなければ、唇の変形などは起こりにくいと考えられます。ただし、傷の中に砂利や土などの異物があれば、傷が目立つようになるかもしれません。異物はよく洗い流す必要があります。
 傷が深く圧迫しても出血が止まりにくいようでしたら縫合処置を受けた方が良いかもしれません。特に筋肉まで傷が及んでいる場合には、口腔外科専門医に診てもらった方が良いでしょう。その場合、少しでも傷を目立たなくするように、特殊な縫合処置(埋没縫合)が必要となるかもしれません。

●治療が終わった後もチェックを受けてください。 
 折れたり抜けたりした歯の治療が終わっても、年2回ぐらいは歯科医院でチェックを受けてください。受傷した歯が乳歯の場合、問題があるまま放置すると、後から生えてくる永久歯に悪影響を与える場合があります。また、問題がある歯を放置することによって、歯並びや噛み合わせに異常が生ずることがあります。