乳歯は、生後6,7カ月に下の前歯から生えはじめて、1歳4,5カ月頃には、最初の奥歯(第一乳臼歯)が生えてきます。2歳半ごろまでに上下合わせて20本の乳歯が生え揃います。6歳になると、それまで乳歯だけだった歯の奥に永久歯の第一大臼歯が生えてきます。この歯は6歳ごろに生えるので6歳臼歯とも言われています。
この第1大臼歯は最も大切な歯なのですが、実は最もむし歯になり易い歯なのです。生えてきたばかりのこの歯は幼弱で、むし歯に対する抵抗力が弱いからです。またこの6歳臼歯は磨きにくい位置にあること、噛む面の溝が深く複雑な形をしていることから、歯ブラシの毛先が届きにくく、汚れがたまりやすくむし歯になりやすいと言えます。
この永久歯の萌出をお子様に自分のお口の中に興味を持ってもらうチャンスととらえ、歯磨きの習慣化と歯磨きの自立に向けての足がかりにしましょう。とはいうものの、6歳頃は自分で自分の歯を守る気持ちはまだ芽生えていません。ですので、歯磨きは「保護者磨き」が基本です。丁寧に磨いてあげてください。お子様が興味を示せば、自分で磨いてもらっても良いでしょう。ただし、その場合保護者による「仕上げ磨き」は必要です。この時高濃度のフッ素(1450ppm)の入った歯磨き剤を使われるのをおすすめします。(6歳未満の場合は歯磨き剤のフッ素濃度は950〜500ppm以下)。もし磨き残しが気になるようでしたら、プラーク染色液で染めだして確認するのも良いでしょう。プラーク染色液はお近くの歯科医院などで購入いただけると思います。大手通販会社でも取り扱いがあるようです。
むし歯予防のためには、歯磨きも大切ですが、お砂糖の入った食べ物や飲み物の摂り方が大変重要であることは前回述べたとおりです。また、フッ素の応用やプロデンティスといった乳酸菌の摂取も有効です。
ご家庭でむし歯予防をしていただくだけでなく、 定期的に歯科医院を受診して、検診と専門的なむし歯予防処置を受けることをおすすめします。夏休み、冬休み、春休みといった長期休暇に合わせて、年3〜4回ほど歯科医院を受診されてはいかがでしょう。むし歯の治療も早期発見早期治療に勝るものはありません。歯科医院での一般的な予防法としては、歯質をむし歯による酸に対して強くするためのフッ化物の塗布や、むし歯になりやすい奥歯の溝を合成樹脂等でふさいでしまう予防填塞処置(シーラント)などがあります。また専門家(歯科医あるいは歯科衛生士)による歯面清掃や歯磨き指導、生活指導なども行います。年齢や環境を考慮した計画的な予防が必要ですので、是非定期検診を受けていただきたいと思います。
6歳前後に生えてくるこの永久歯は一生使うものです。また、この歯は噛むことの鍵となります。歯全体の運命を握っていると言っても過言ではありません。もしこの第1大臼歯を失うことになれば、口の機能が衰えるのは当然なことです。お子様の将来のためにも是非この歯を大切に守ってあげてください。